技術書に対して、馴染みのなさや苦手意識を感じている人は多いのではないかと思う。
僕もそうだった。ITの事はITを駆使して、本を使わずにお金もかけずに勉強すれば良いと思っていた。
しかし、振り返ってみると結局は本を使って勉強する時間が多かった。
情報の質がインターネットと変わらなかったとしても、体系的に集約された情報や一覧性の高さに書籍の価値があることに気がつき始めたからだ。
もちろん、気になった技術やど忘れした事を手早く調べるためにはネットが有効だ。
だが、初心者が体系的に学びたい場合は、本を使うとトータル的に時間が短縮できるのではないかと思う。
というわけで、2年ほどネットワークを勉強してきた僕が今まで読んでオススメだと思った本を紹介していこうと思う。
まだ初心者の域を脱していないかもしれない自分のことは一旦棚に置いておき、なるべくわかりやすいラインナップを心がけた。
ネットワーク知識の基礎固めができる本
マスタリングTCP/IP 入門編
定番中の定番、まずはこの本から入れば間違いない。
一度読むだけでなく、書いてあることが理解できるまで複数回通読してほしい。
分厚い本で、中身を見ると技術書然としているので少し引いてしまうかもしれないが、ここは最初の壁と思ってがっつり取り組もう。
この本の内容を押さえた状態で次のステップに進む事ができれば、理解がかなりスムーズにいくはず。
3分間ネットワーク基礎講座
そうは言っても、やはり多量の文字や難解な図ばかり見ているのは辛いし、ページが進まないと気が滅入ってくると思う。
そんな時は、読み物として3分間ネットワーキングがおすすめだ。元はネットワークの基礎を解説をしているサイトだが、本にもなって発売されている。
こちらは、わかりやすさを重視した柔らかい表現で書かれている。
登場人物たちの軽快なやりとりで解説する形式の本で、あまり堅苦しい雰囲気がない。「ネットワークどころかITのことを何も知らない」という場合はこちらの本から入るのもあり。
1講座3分…とはいかないが、細切れになっているのでキリよく勉強できる点も魅力だ。
もしくはマスタリングと併読し、行き詰まったらこちらを見て理解を深めるのが良いだろう。
インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門
マスタリングで基礎を固めた後は、少し実務寄りのこの本がおすすめ。
実際に現場でネットワークを構築する際に気をつける事や、定番の構成などがよくわかる。
タイトルにある『設計』という言葉が難しそうで身構えてしまうかもしれないが、要は方針やルールを決めることだ。
「あとで困らないように広めにIPアドレスを確保しよう」
「ポートを払い出す時に迷わないように順番を決めておこう」
といった決め事も設計と言えるだろう。この本を読むことで、設計という行為がそう難しいことばかりではないとわかる。
また、この本は設計の方法ばかりが書かれいているわけではなく、大半は基礎的な技術の解説で構成される。
技術の解説をしていく中で、『現場で使う時に気をつけるポイント』のような形で設計方法が紹介されていく形式だ。
基礎的なネットワークの知識がある前提で書かれている本なので、マスタリングの内容を抑えておくのが望ましい。
ちなみに著者が結構緩い文体で書いてくれていることと、豊富に図が掲載されていることから、見た目の分厚さよりもサクサク読んでいける。
個人的におすすめ度が高いので結構たくさん書いてしまった。
インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク・デザインパターン 実務で使えるネットワーク構成の最適解27
先ほどの『インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門』と同じ著者の作品。
こちらは典型的なネットワーク構成パターンの紹介とその解説がメイン。
できれば前述の設計入門を読んでから手に取ると良いだろう。こちらは通読して知識の保管に使うも良しだが、職場に置いておき迷った時に読む辞書的な使い方が向いていそう。
現場で聞いたことのある言葉がたくさん出てくるため、この本を読んで「そういう意味があったのか」と腹落ちする部分が多々あるだろう。
ネットワークと関連の深いセキュリティの本
「ネットワークの知識」だけで回る業務は、案外多くない。
基礎的なネットワーク技術を学んだ後には、次のステップとして関連する技術を体系的に学んで行くのが良いだろう。
最たるものとして、セキュリティはネットワークと非常に関係が深い。
暗号技術入門 第3版
副題は「秘密の国のアリス」。
暗号化技術を解説した名著で、ネットワークと関係が深い暗号化技術や電子証明書の仕組みなどが学べる。相当丁寧に書いてある。
技術書ではあるが、普通に好奇心を刺激されて先が読みたくなるという貴重な経験をくれた。
暗号化技術は複雑で、考え方に慣れないうちは頭がこんがらがる。しっかりと知識が身につくまで、手元に置いておきたい本だ。
すっきりわかった!VPN
ネットワークを扱う現場に入れば、「VPN」という名前を聞くことがあるだろう。
意外と専門書が少ないVPNであるが、この本はわかりやすかった。
VPNは、ネットワークやセキュリティと密接に関わる技術。昨今では、クラウドシステムとの接続や移行の際に使用する機会があると思うので、勉強しておいて損はないと思う。
僕もVPNについてよく知らず、
- インターネットVPN
- SSL-VPN
- IP-VPN
など種類が多くさっぱりだったが、この本を読んで概ねわかるようになった。
暗号化などセキュリティ技術の説明も詳細に記載されているが、先の「暗号化入門」を読んでおけば全く問題なく理解できる。
ちなみにこの本はネットワークマガジンという雑誌の連載記事を編集した書籍らしく、そのためか同じ内容の説明が繰り返し行われる傾向がある。だがそれが復習になって良い。
欠点は、中古しか売っていないことだ。
WEBシステムに欠かせないDNS
すっきりわかった!DNS&メール
先ほどのVPNの本と同じシリーズ。
WEBシステムなんかを扱う場合、DNS知識は必須だろう。DNSはサーバ技術寄りのイメージが強いが、ネットワークエンジニアとしても押さえておきたい。
インターネットでの通信やメール配信の仕組みがまるっと理解できるので、業務の幅が広がるだろう。
ちょっと古い本だが、基本的な技術部分は今でも通用する知識のはずだ。
残念ながらこちらも中古しか売っていない。
最後に
僕が読んだ事のある中から選んだのでジャンルの偏りがあったかもしれないが、まぎれもなくオススメの本たちを選定したつもりだ。
読みたいけど積んでいる本がまだあるので、良い本だったら読破でき次第追加して行こうと思う。
個人的には、次は「パケット解析系の本」と「負荷分散入門」を読みたいと思っている。
紹介するときは、あまり初心者向けからかけ離れないように気をつける。